近年のスマートフォンのカメラの進化は目覚ましい。

ここのところでiPhoneの値上げのニュースや新機種の話題も少し出ています。
もちろん、Androidスマートフォンも負けずに「シェア率がiPhoneを抜いた」なんて御話も。

その中で最近、特に感じるのはスマートフォンのカメラ性能に目覚ましい進化が訪れているということ。

一昔前まで、1つのスマートフォンには1個のカメラが当たり前でした。
いまではデュアルカメラは当たり前になり、更に特徴付けも各ブランドで巧妙です。

iPhoneで言えばiPhone7 Plusから始まり、現行機であるiPhone13Proシリーズではカメラの数も大きさも過去最大級になり本体レイアウトもカメラの部分が30%近く占めるデザインです。

Androidスマートフォンで言えば、深度センサーとしてのカメラを除くと特徴的なカメラ数の増減は見られませんが、AQUOS R6に始まる「大型CMOS搭載」の波が影響してか、単一カメラに多くの魅力を持たせたり、XperiaシリーズやGalaxyのフラッグシップに見られるペリスコープカメラによる光学式ズームの搭載など、iPhoneとは一味違う映像体験を提供する工夫がなされています。

参考リンク:https://mobanew.com/2021%e5%b9%b4%e3%81%ae%e6%96%b0%e5%9e%8bxperia%e3%81%af1%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%83%81%e3%82%bb%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%83%bc%e6%90%ad%e8%bc%89%ef%bc%9f%e8%a9%b1%e9%a1%8c%e3%81%ae1%e5%9e%8b%e3%82%bb/

つまり最近のスマートフォンではカメラによるユーザーへの新しい体験を重視している。ともいえますね。

ユーザーがわかりやすく体験を得られる工夫。

AQUOS R6

でもなぜ、そんなにカメラを重要視しているのか?
中には「カメラはそんなにいらないから」なんて声があるとも聞きます。

近年のスマートフォンは、価格帯や性能により大きなカテゴリとして
・フラッグシップ(高級機)
・ミドルレンジ(実用・バランス重視)
・ローエンド(廉価・機能限定)
この3つに加え、単機能強化やハイスペック+ローコストなコスパ重視のモデルなどに細分化されています。
そしてカテゴリの細分化が進むと、棲み分けが難しくなるのは工業製品の宿命でしょう。

性能や価格帯で簡単に区切れるローエンド=ミドルレンジに関しては、棲み分けもそう難しくありません。
問題になるのはフラッグシップモデル、そう高級機です。

価格、性能、機能や使い勝手のすべてにおいて高級であることを求められるモデルの「他とは違う」という棲み分けをアピールする要素の選別が非常に困難です。

スマートフォンが一人一台の時代にはなりましたが、ユーザーが求めるものも同時に多種多様になっているからです。

例えば性能面で言えば高級機ほどのモデルになれば上位SoC(処理チップ)が搭載されている事が前提で、処理性能を競う購買層も限られていますし、目に見えて数値化して差別化をした上で購入する層は更に少ないでしょう。
価格もフラッグシップモデルになれば各ブランド10万超えは当たり前ですし、その価格に対してコスパ重視のユーザーは機能を割り切ることも知っています、もちろん購買層の選定を広く保つことは出来ますが薄利多売になりかねません。

そこでフラッグシップに求められる要素は機能面。

実際に使用してみないとわからない使い勝手はセールスポイントにはなりません。
動画主体の宣伝活動も、発売後の反応を見るにはいいですが購買意欲に繋がるか?は別問題です。

そうなるとプレスリリースの段階から万人にアピールしやすいのは「カメラの性能」です。
作例も挙げられますし、なによりも元々が写真機という別カテゴリに属する文化物ですから先人の知恵による解説も比較的容易に行なえます。
見た目にも分かりやすく、フラッグシップモデルにしか出来ない映像体験がユーザーにも一番伝わりやすいと考えるのが妥当でしょう。

また現在ではスマートフォンのカメラが日常的に使用され、写真機に(圧倒的ではないものの)劣らない表現力を得たことは周知の事実です。

誰もが使う機能だからこそ、一番にアピールしたい進化が集約される。

かつて写真機が一般的だった時代にもあったことです。

スマートフォンのカメラは、別の畑で育てられた野菜のようなもの。

冒頭で「目覚ましい進化」と書きましたが、これはあくまで「スマートフォンのカメラ」だけを表現する言葉でしかありません。

今スマートフォンに搭載されているカメラの進化過程は、かつて写真機でも起きた進化です。

これまでは写真機という畑で育て改良してきた野菜を、今はスマートフォンという畑で育てている。
しかし、これまでの進化と違うところは「行き着く先がない」というところでしょう。

スマートフォンは現在、進化のしようがないレベルの高度で高価格の製品となっています。
形状、性能、用途、機能etc…

もちろん、時折変わった形状や機能を持つスマホも開発されますが…一般的に分かりやすく進化をし続けているのは搭載カメラのみ、ですがいつかは進化によって他の特徴を壊さなければいけないタイミングも出てきます。
(代表例はシンプルでミニマルなデザインが高評価を得ていたiPhoneに大きな3つのレンズが搭載されたり、でしょうか)

「どうせ毎日使うなら、いいものを」

この終わりのないユーザーの欲求をスマートフォンが満たし続けることはできるのでしょうか?
筆者は、カメラの進化だけでは難しいと感じています。

私達が生活の中で選択するべきスマートフォンの要素は、本当の意味で製品に込められているのか。
考えるときが近づいています。